散水ガイド
散水(かん水)のガイド
●はじめに
ここでは農業・環境緑化・工業の各分野で行なわれている色々な散水(かん水)に、どのような機器が使われるかを施工実績とあわせてご紹介します。
1-1.農業分野
用途や作物によって栽培方法が異なりかん水方法も異なってきます。従って、かん水方法に適したかん水機器を選ぶことが大切です。
[かん水」と「散水」の違いは?
「かん水」とは、作物や植栽など植物の生育を目的として水を与えることをいいます。
「散水」は、かん水よりも広い意味で使われ、水をまくことの総称です。
「かん水」は主に農業分野で使われる言葉ですが、農業の中でも
(1)防除、葉面散布、凍霜害防止など植物の育成にとっては補助的な目的
(2)ハウスの屋根への水まきやハウス内で霧を発生させて冷却させる暑熱対策
などの水まきには「散水」が使われます。
ドリップかんがいは、ドリップチューブを使って作物の根元に長時間連続的に水を滴下するかんがい方式です。ドリップチューブは点滴チューブとも呼ばれ、ドリップかんがいは点滴かんがいとも言われます。
ドリップチューブの内側にはドリッパーが組み込まれています。ドリッパーのラビリンス(迷路)機構によって、水を減圧して小さな孔から水滴状に水を吐出します。ラビリンスはセルフクリーニングで目詰まりを防止しています。
定流量タイプのドリッパーには圧力コントロール用のダイアフラムが組込まれており、長距離の時や高低差がある時でも滴下量が変わらないようになっています。
ドリップかんがいは葉面に水がかからず湿度が高くなることがないので、病虫害の発生が少なくなります。また、土壌の団粒構造が保持される特徴があり、通気性と排水性・保水性が良好な状態になるので根の生長が促進されます。さらにピンポイントにかん水できるので節水かんがいに最適な方式です。
敷設できるチューブの長さが水圧やドリッパーの間隔に応じて制限されること、薬剤の散布ができないことが注意点です。
マイクロかんがいは、飛距離の短いマイクロスプリンクラーを使って作物の根元に直接散水する方式です。
マイクロスプリンクラーは、ノズルと散水アダプター(インサートやスイベルという名称です)の組合せで、色々な流量と散水パターンを選ぶことができます。
細かい霧を発生できるものを特にフォガーと呼んでいます。
地面に設置して散水する方式以外に、ハウスでは頭上から吊下げて散水する方法もあります。
マイクロスプリンクラーは、かんがいだけでなく育苗やハウスの温湿度管理などにも利用されています。
※ドリップチューブとマイクロスプリンクラーのかんがい方式をあわせてマイクロかんがいと呼ぶ場合もあります。
スプリンクラーかんがいは、最も広く使われているかんがい方式です。
この方式はスプリンクラーの設置を適切に行なえば均等に散水できること、傾斜地や起伏地でも使いやすいこと、少量頻繁な散水ができるので降雨状況に対応しやすいこと、などの利点があります。
ただし、水圧を必要とするのでポンプなどの施設が必要になることや風の影響によって散水分布が変化することなどが注意点です。
用途 |
作物または目的 | ドリップかんがい | マイクロかんがい | スプリンクラー かんがい |
---|---|---|---|---|
露地かん水 | にんじん、アスパラ、サトウキビ、きゅうり、トマト、ピーマン、玉菜(キャベツ)、ながいも、軟弱野菜 | |||
頭上かん水 (吊下げかん水) |
育苗、葉物野菜、作物全般、観葉植物 | |||
樹下かん水 | なし、りんご、ぶどう、さくらんぼ、マンゴー | |||
ベッド/ポット 栽培用かん水 (養液栽培) |
いちご、トマト、いちじく、パパイヤ、ブルーベリー、葉物野菜、花卉、観葉植物 | |||
凍霜害防止散水 | お茶 | |||
粉塵防止散水 | お茶 | |||
フォガーシステム | 牛舎、豚舎、鶏舎の冷却・防塵・加湿・消毒・防臭 | |||
ハウス内温湿度 管理散水 |
ハウス内の温度と湿度の管理 | |||
ハウス屋根 散水冷房 |
屋根に散水することによりハウス内の温度上昇を抑制 |
1ー2.農業・パイプライン制御
農業用地に水を行き渡らせるパイプライン(管路)では、中を流れる水の圧力や流量をきちんと制御することが大切です。貯水槽では水位調整弁で貯水レベルをコントロールします。水をろ過して水質を維持管理することも重要です。
用途 |
目的 | 施工例 |
---|---|---|
圧力制御システム | 二次圧を設定圧力に自動調整。通水時・止水時とも設定圧力を常に維持 | |
流量制御システム | 瞬時流量を設定流量に自動制御、積算流量の管理は量水器で | |
水位制御システム | 水位レベルをコントロールすることで貯水、流量、圧力を調整・制御 | |
ろ過システム | 水中の有機物や砂・小石などの不純物や鉄分の除去。藻やアオコの除去も |
2.環境緑化分野
機器の利用方法は農業分野と同じです。
グランドなど広い範囲に対して雨のように水をまく大型のスプリンクラーをレインガンといいます。
散水機器の制御にソーラー式コントローラーを使い省エネ化をしたり、雨水を貯めて再利用することにより省資源化することも行なわれています。
暑熱対策・熱中症対策にも活躍しています。
用途 |
目的 | ドリップチューブ | マイクロスプリンクラー | スプリンクラー |
---|---|---|---|---|
屋上緑化システム | ビル屋上の緑化、屋上利用の菜園。ヒートアイランド対策、景観の改善、イメージの向上に | |||
壁面緑化かん水 システム |
日射の遮断と植物の蒸散作用で壁面の温度上昇を抑制。暑熱対策・省エネ・心理的防音効果 | |||
打ち水散水システム | 保水/透水性舗装の気化熱を応用した暑熱対策用の散水 | |||
校庭芝化/グランド 散水システム |
校庭の芝生育成、グランドの埃防止・地面状態の管理。芝生による健康促進と環境保全を | |||
フォガーシステム | 細霧噴霧による気化熱で周囲の温度を低下。暑熱対策・熱中症予防にも有効。 | |||
防災散水システム | 公園、社寺、仏閣など文化財を火災から守るシステム | |||
屋根散水システム | 水の気化熱で屋根からの熱負荷を遮断し室内温度の上昇を抑制、建物内への放射熱低減で効果アップ | 屋根散水による暑熱対策の施工例 |
||
植栽/植樹帯かん水 システム |
雨水などを利用し、デザイン性あふれ効果のある効率的なかん水を | |||
ベランダ緑化/菜園/プランターかん水 システム |
雨水や水道水で狭いスペースに効率的なかん水を実現 |
3.工業分野
鉄道の消雪散水は当社開発の専用特殊スプリンクラーを使用し、降雪時の定時運行を強力にサポートしています。工場の冷房効率向上のための屋根散水は、近年多くの工場で取り入れられています。
用途 |
目的 | ドリップチューブ | マイクロスプリンクラー | スプリンクラー |
---|---|---|---|---|
消雪散水システム | 鉄道線路の雪を溶かし、安全と正確な運行を | |||
粉塵防止/乾燥防止 散水システム |
製鉄所ヤード、産業廃棄物埋立地などの粉塵防止/乾燥防止・環境保全 | |||
屋根散水システム | 屋根に散水することにより室内温度上昇を抑制 |
4.海外分野
海外においても水を通して幅広く社会に貢献しています。海外援助(ODA)事業ではインフラ・農業基盤・環境改善の各整備事業に取り組んでいます。またプラント関連の事業も推進しています。
用途 |
目的 | 国名 |
---|---|---|
パイプライン システム |
遠隔地に確実に水を届けます |